子どもの発達や育児に向き合うとき、どうしても子どもへのサポートに意識が向きがちです。当然のことです。子どものことが心配で、少しでも力になりたくて、日々全力で向き合っている。それはとても尊いことです。
でも私が現場で強く感じるのは、子どもを支えるご家族自身も、支えられる必要があるということです。療育の現場で、精神科の病棟で、そして地域の支援の場で、私は多くの家族の方と出会ってきました。疲れていても「もっと頑張らなきゃ」と自分を追い込んでしまう姿を、何度も見てきました。今日は、家族みんなが笑顔でいるために、ぜひ知っておいてほしいことをお伝えします。
親が笑顔でいることが、子どもの安心につながる
子どもは親の表情や雰囲気をとても敏感に感じ取ります。まだ言葉では伝わらない小さな子でも、親の心の状態を体全体で感じています。親が穏やかで安心していると、子どもも安心できる。これは単なる精神論ではなく、脳科学的にも裏付けられていることです。
逆に、親が限界まで頑張りすぎていると、子どもはそれを感じて不安になることもあります。「自分のせいでお母さんが疲れている」「自分が問題だからお父さんが悩んでいる」と、子どもなりに感じとってしまうことがあるのです。
飛行機の中で流れる安全説明を思い出してください。「酸素マスクは、まずご自身に装着してから、お子様にお付けください」。これは子育てにも同じことが言えます。自分が酸欠になっていては、子どもを助けることはできません。
頑張りすぎているサインに気づいて
日々忙しく動いていると、自分の疲れに気づきにくくなります。「まだ大丈夫」「これくらいは普通」と言い聞かせながら、実はかなり消耗しているということが少なくありません。次のようなことが続いているなら、少し立ち止まるサインかもしれません。
- ぐっすり眠れない日が続いている
- 子どもに対してイライラしてしまい、自己嫌悪になる
- 「自分だけが頑張っている」と孤独を感じる
- 趣味や好きなことをまったく楽しめなくなった
- 将来への不安が頭から離れない
- 体の不調(頭痛、胃の痛み、疲労感)が続いている
これらは、あなたが弱いのではなく、それだけ一生懸命に向き合ってきた証です。疲れるのは当たり前のことです。疲れを感じることができるということは、それだけ真剣に生きているということです。
家族みんなで「チーム」になる
育児や支援は、ひとりで抱え込むものではありません。パートナー、祖父母、支援者、地域の人たち――周りの人と上手に力を借りることが、長く続けるための秘訣です。
「頼ることは迷惑をかけること」と思っている方が多くいます。日本の文化として、人に頼ることをためらう風潮があるかもしれません。でも、頼り合えることが、家族というチームの強さです。ひとりの人間が担えることには、必ず限界があります。その限界を認めること、そして誰かに助けを求めることは、弱さではなく、賢さです。
また、パートナーとの関係も大切です。子どものことで頭がいっぱいになって、夫婦間のコミュニケーションが減ってしまうことがあります。意識的に話す時間を作る、感謝の言葉を言葉にして伝える、小さなことでも「助かった」と表現する。そういった積み重ねが、家族全体の支え合う力を育てていきます。
支援者や専門家を上手に活用する
ひとつ、伝えたいことがあります。専門家に相談することは、「子育てに失敗した」ということではありません。むしろ、子どものために最善を考えられる、素晴らしい親御さんの行動です。
療育の先生、保育士、学校の先生、発達支援センターのスタッフ、保健師、心理士、精神保健福祉士……いろんな専門家がいます。「どこに相談したらいいかわからない」という方は、まずは地域の保健センターや発達支援センターに電話してみてください。そこから適切な場所につないでもらえます。
そして、支援者も完璧ではありません。一人の支援者に全てを求めず、複数の人と関わりながら、少しずつ力を借りていくことが長続きするコツです。
まず、自分自身を労ってください
今日一日、子どもと向き合ったあなたは、それだけで十分に素晴らしい。うまくいかなかった日も、怒ってしまった日も、涙が止まらなかった日も。それでも翌朝また子どもの顔を見て、一緒に過ごそうとしている。その姿そのものが、愛情の形です。
完璧な親なんていません。失敗しても、また明日やり直せばいい。そして、あなた自身もひとりの人間です。疲れてもいい、弱くてもいい、助けを求めていい。
家族みんなが笑顔でいられるように、まず自分自身を大切にすることから始めてみてください。あなたの笑顔が、家族の笑顔につながります。あなたが安心していることが、子どもの安心にもなります。今日も、本当にお疲れ様でした。
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